導入事例の作り方|制作の進め方と、お客様への依頼・取材・外注の判断

「うちも導入事例を作りたいんですが、お客様にどう頼めばいいのか分からなくて」。この相談を、何度も受けています。
多くの場合、止まっているのは文章ではありません。お客様に「取材させてください」と言い出せないところで止まっています。忙しい相手の時間をもらうこと、断られたときに気まずくなること。この2つが頭をよぎって、企画のまま半年が過ぎる。よくある光景です。
この記事では、導入事例の制作を、その関門をどう越えるかから順に整理します。依頼のしかた、断られたときの代わりの案、取材で聞くこと、書き方の型、自社で作るか外注するかの判断、そして費用の考え方まで。詰まりやすい順に並べました。
導入事例が完成しない理由は、書く力ではありません
手が止まる場所は、だいたい次の3か所に集まります。
| 止まる場所 | 実際に起きていること |
|---|---|
| お客様に頼めない | 忙しそうで切り出せない。断られたら関係が気まずくなる気がする |
| 聞き出せない | 取材はできたが「満足しています」で終わり、具体的な話が出てこない |
| 出せる数字がない | 効果は感じているが、数字で示せるものが手元にない |
3つとも、書く力とは関係ありません。設計と段取りの問題です。逆に言えば、ここを先に決めておけば、文章そのものは後からどうにでもなります。
なお、導入事例の検索需要はいま伸びています。弊社が2026年8月に調べたところ、「導入事例 制作」の月間検索数は直近3か月で約5倍になっていました。作りたい会社が増えている一方で、作り方の情報は「書き方」に偏っていて、いちばん詰まる依頼の部分が手薄です。だからこの記事では、そこを厚く書きます。

いちばんの関門は、お客様への依頼です
頼むタイミングを、成果が出た直後に置く
依頼が通るかどうかは、話し方よりタイミングで決まります。いちばん通りやすいのは、お客様が成果を実感した直後です。目に見える結果をご報告したとき、契約の更新や追加のご相談をいただいたとき、担当者の方から「助かりました」と言葉をいただいたとき。この3つの場面が来たら、その場で切り出してください。
期が変わって記憶が薄れてからでは、同じ依頼でも重く感じられます。後で改めて時間をもらうより、その場で一言添えるほうが、結果的に通ります。
相手の不安を、先に消してから頼む
断られる理由のほとんどは、内容ではなく不安です。次の4つを依頼の時点で伝えると、返事が変わります。
- かかる時間:どのくらいの時間をいただくのか(30分なのか、1時間なのか)
- 原稿の確認:公開前に必ず内容を確認いただけること
- 掲載する範囲:社名を出すのか、業種だけにするのか、担当者の顔写真は載せるのか
- 取り下げ:後から掲載をやめたいと言えること
とくに最後の1つが効きます。「いつでも取り下げられる」と分かっていれば、相手が背負うものはほとんどなくなります。そう伝えておくこと自体が、相手の判断を軽くします。
断られたら、条件を落として聞き直す
一度断られても、そこで終わりにしないでください。掲載条件を下げれば通ることが、かなりあります。
- 社名は出さず、業種と規模だけにする
- 数字は出さず、取り組みの内容だけにする
- 全文の取材ではなく、短いコメント1つだけいただく
- 担当者名は出さず、部署名までにする
「社名を出さなくても構いません」と最初から添えておくと、承諾率は上がります。匿名の事例でも、中身が具体的であれば読む人の判断材料になります。社名がないと価値がない、ということはありません。
承諾は、口頭で終わらせない
承諾をいただいたら、掲載範囲を書面かメールで残してください。社名を出すか、数字を出すか、写真を使うか。ここを口頭のままにすると、公開後に「そこまでとは思わなかった」という行き違いが起きます。難しい書式は要りません。メールで箇条書きにして、返信をもらうだけで十分です。
取材で何を聞くか
4つの順番で聞くと、記事の形になります
弊社は、次の順番で取材しています。この順に聞けば、そのまま記事の構成になります。
- 課題:導入の前に、何に困っていたか
- 考え方:なぜその解決方法を選んだか。他に何を検討したか
- 実施内容:実際に何をしたか
- 結果:何が変わったか

この型は、弊社が制作したキャリアチアーズ様の事例でも実際に使っています。読む人が知りたいのは、結果そのものより「自分と同じ状況だったか」です。だから1つ目の課題を厚く聞きます。ここが薄いと、どんなに良い結果を書いても他人事のまま読まれます。
「満足しています」から先へ進む聞き方
取材でいちばん困るのが、話が広がらないときです。抽象的な答えが返ってきたら、次のように聞き直します。
- 「具体的には、どの場面でそう感じましたか」
- 「導入前は、その作業にどのくらい時間がかかっていましたか」
- 「社内の方の反応で、印象に残っているものはありますか」
- 「もし導入していなかったら、いまどうなっていたと思いますか」
最後の質問は特に効きます。比較の対象が生まれると、人は具体的に話せるようになります。
数字が出せない相手からも、材料は取れます
「効果は感じているが、数字は出せない」と言われることは珍しくありません。そのときは、数字の代わりになるものを聞きます。
- 変化が起きた時期(「3か月目くらいから」)
- 変化した行動(「問い合わせの電話が増えて、対応表を作った」)
- 社内の言葉(「営業から、資料が使いやすくなったと言われた」)
数字がなくても、行動の変化が書いてあれば事例として成立します。無理に数字を作らせるより、こちらのほうが結果的に読まれます。
自社で作るか、外注するか
判断の分かれ目は、費用より時間と関係性です。
自社で作ったほうがよい場合は、お客様との関係が近く、取材にも同席できるときです。相手の事情を知っている人が聞くほうが、話は深くなります。文章は多少ぎこちなくても、中身が具体的なら読まれます。
制作代行を検討したほうがよい場合は、取材の日程調整と原稿確認のやり取りに手が回らないときです。導入事例は、書く時間よりやり取りの時間が長くかかります。1本作るのに、依頼・日程調整・取材・原稿作成・先方確認・修正と、往復が何度も発生します。ここが続かないと、1本目で止まります。
ただし、外注しても依頼と承諾だけは自社でやってください。お客様との関係を持っているのは自社だからです。外部の会社が先に連絡すると、相手は身構えます。順番は、自社が頼む、承諾をもらう、それから制作を任せる。この順です。
費用の考え方
導入事例の制作費は、作業範囲で大きく動きます。金額そのものより、何が含まれているかを先に確認してください。
| 費用が動く要因 | 見積もりで確認すること |
|---|---|
| 取材の有無と方法(対面・オンライン・書面) | 取材時間と、移動費が別途かかるか |
| 撮影の有無(担当者の写真、現場の写真) | カメラマンの手配は含まれるか。写真の使用範囲はどこまでか |
| 原稿確認の回数 | 何回までが基本料金内か。それを超えるとどうなるか |
| 本数と納期 | 1本ごとか、まとめて依頼すると変わるか |
| 図版・グラフの作成 | 何点まで含まれるか |
相場を1つの数字で語ることはできません。書面での簡単なコメントだけなら数万円、取材と撮影を含めて構成から作るなら十万円以上になることもあります。同じ「導入事例1本」でも、中身が違えば金額は数倍変わります。見積もりを比べるときは、上の5項目を同じ条件でそろえてから並べてください。
なお、掲載のしかたについて1つだけ。消費者庁は、2023年10月から規制の対象になったステルスマーケティング(※広告なのに、広告だと分からない形で見せること)について、規制されるのは「広告であって、一般消費者が広告であることを分からないもの」と説明しています。自社サイトに自社の事例として載せるなら、誰が出しているものかは読む人に伝わります。気をつけたいのは、事業者が関わっていることを見えなくして、第三者の感想のように見せたときです。どこが出している情報なのかが分かる形にしておいてください。
弊社が導入事例の制作でしていること
弊社は、自社サイトにも導入事例を掲載しています。キャリアチアーズ様の事例がそれで、掲載許諾をいただいたうえで、業種、支援内容、記事1本で月319件の訪問という数値、サービスサイトへのリンクまで公開しています。自分たちが作ったものを、自分のサイトで見ていただける状態にしています。ここまで出せているのは、依頼の時点で掲載範囲を決めていたからです。
制作をお引き受けするときにしているのは、次のことです。
お客様への依頼文のたたき台を作り、掲載範囲の確認事項を整理します。取材は同席か代行のどちらでも対応します。原稿は先方確認を前提に組み立て、確認いただいた範囲だけを公開します。数字が出せない場合は、行動の変化で構成し直します。
記事制作全般では、大手クラウドソーシングで満足449件・残念0件の評価をいただいています(2026年7月時点の公開評価)。取材記事と導入事例は、その中でも続けてご依頼いただいている領域です。執筆者としての掲載例には、カミナシ「現場と人」の解説記事(執筆者として記名)や、PFU「デジUP!」での書評家 三宅香帆さんへのインタビュー記事があります。
取材は、文章だけとはかぎりません。大工直営でリフォームを手がける石狩市の合同会社壱工房様では、作業場にカメラマンと入り、代表の鎌田がインタビューを担当して、事例を動画で残しました。代表おふたりは1人ずつ別に撮っています。並べると対談になり、人柄より会話の印象が残ってしまうためです。同じ質問を投げて、それぞれの答えをつなぎました。掲載の許可をいただいているので、そのままご覧いただけます。
支援の範囲は記事・コンテンツ制作の支援内容にまとめています。SEOと組み合わせて考えたい場合はSEO対策の費用相場もあわせてご覧ください。
導入事例の制作についてよくある質問
お客様に断られたら、その事例は諦めるしかないですか?
条件を落として聞き直してみてください。社名を出さず業種だけにする、数字を出さず取り組みだけにする、短いコメント1つだけにする。この3つのどれかで通ることがよくあります。匿名でも、中身が具体的なら読む人の判断材料になります。
導入事例は何本くらい必要ですか?
本数より、対象がばらけているかのほうが大切です。同じ業種・同じ規模の事例が5本並ぶより、業種や課題の違う事例が2本あるほうが、読む人は自分に近いものを見つけられます。まず1本作って、反応を見てから次を決めてください。
取材はオンラインでも大丈夫ですか?
問題ありません。移動の負担がない分、相手の時間もいただきやすくなります。ただし現場の様子や実物を見せたい事例は、対面のほうが材料が増えます。写真が必要かどうかで判断してください。
お客様の原稿確認は、どこまでお願いすればよいですか?
公開前に全文を確認いただくのが基本です。事実の誤り、社外に出せない情報、表現の印象。この3点を見ていただければ十分です。確認の往復は基本2回までと決めておくと、双方の負担が読めます。
数字を出せない事例でも、意味はありますか?
あります。読む人が最初に確認するのは、自分と同じ課題を持っていたかどうかです。課題と過程が具体的なら、数字がなくても判断材料になります。数字は補強であって、主役ではありません。
導入事例と、お客様の声は何が違いますか?
お客様の声は感想が中心で、短くまとめたものです。導入事例は、課題から結果までの過程を追う読みものです。検討段階の相手に読ませたいなら、過程が分かる導入事例のほうが効きます。両方あるなら、役割を分けて置いてください。
まとめ:頼むところまでが、制作の半分です
導入事例が完成しない理由は、書く力ではありません。お客様に頼めるかどうかです。
順番はこうです。成果が出た直後に頼む。時間、原稿確認、掲載範囲、取り下げの4つを先に伝える。断られたら条件を落として聞き直す。承諾は書面かメールで残す。ここまで通れば、取材と執筆は段取りの話になります。
いまの状況ごとに、次の一歩はこうなります。
- まだ1本もない方:直近で成果が出たお客様を1社だけ思い浮かべ、依頼文を書いてみてください
- 取材はできたが形にならない方:課題・考え方・実施内容・結果の4つに、聞いた話を振り分け直してください
- やり取りに手が回らない方:依頼と承諾だけ自社で行い、その先を外部に任せる形を検討してください
弊社の事例ページも、同じ手順で作りました。キャリアチアーズ様の事例をご覧いただくと、どこまでを公開範囲としているかが分かります。
参考にした公式情報
検索数は2026年8月6日にGoogleキーワードプランナーで確認した実数です。制度や運用は変更されるため、実施時はリンク先の最新情報をご確認ください。
